ホール&オーツ
最初に聞いたのは「アバンダンド・ランチョネット(1973)」でした。ロック色は抑えめでアコースティック調の曲が多く、ダリルもマンドリンなんかを弾いていたような記憶があります。「She's
Gone」がヒットしました。
1974年、彼らはフィラディルフィアからニューヨークに活動の拠点を移し、急速に「都会色」を強めていきます。元々のソウルフレーバーに加えてニューウェーブやロックをミクスチャーしたサウンド、夜の都会を感じさせる冷たい人工的な空気感(エコーの使い方なんかゾクっとするほど)、セクシーなボーカル、スタイリッシュな歌詞。サウンドの洗練とともにヒットも続出しました。
アルバムのジャケットアートも見事でした。何せ当時LPですからね。ビジュアルとしてもインパクトがでかいわけですよ。輸入盤屋さんで彼らの新譜を見るたび、ヒリヒリとした衝撃が。「Beauty
on a Back Street」での裏町ギャングのようなふたり、「X-static」のポップアートぶり…。
やがて世は80年代。MTV時代を迎え「Private
Eyes」「H2O」と連続の大ヒット。テレビで彼らを見ない日はないほどの盛り上がりぶりでした。
彼らの歌を聴くとなぜか歌舞伎町を思い浮かべます。パワフルで、アーティフィシャル(人工的)なところが共通してます。
ポップでありながら「都会的であること」のスゴミを失わないホール&オーツ。
21世紀になってもバリバリの現役です。
1982年発売「H2O」から、「Maneater」です。
「女性差別だ」という訴えもあったとか、なかったとか。
maneaterとは
man を eat するもの、ということで元は「人喰い動物」なんですが、スラング化して「男を食い物にする女、もてあそぶ女」という意味で使われ
ています。
解説
☆「男はオオカミなのよ」(by Pink Lady)
■She'll only
come out at night
「彼女は夜、現れる」
come out は「現れる」「外に出てくる」という感じですね。
■The lean and
hungry type
「痩せた、飢えたタイプのヤツ」
lean は「痩せた」。類語として
thin, slender, skinny, slim 等があります。
普通に「痩せた」だと
thin。「骨と皮だけのようにすごく痩せた」だとskinny
を使います。slender や slim
はカッコよく痩せてる感じですね。
lean は、「筋肉質な痩せ方」というニュアンス。細いけど猛獣のような強さを持っているという感じですか。
■So many have
paid to see what you think you're getting for free
「タダで手には入るものがどんなことかわかるまで、たくさんの代償を支払って
きた」
タナボタのつもりで鼻の下を伸ばしていると、骨までしゃぶられてしまうよ、という警告でしょうか。for
free は「無料で」
■The woman is
wild, a she-cat tamed by the purr of a Jaguar
「その女はワイルドで意地悪なメス猫、ジャガーのうなり声に飼い慣らされる」
she-cat は「メス猫、意地悪女」。洋の東西を問わず、なぜか女性は「ネコ」ですね。
purr は擬音で「ネコ(ジャガーもネコ科)などがノドをゴロゴロいわせるとき
の音」。
ちょっといい男(jaguar)にはすぐなつくメス猫というイメージ。
■watch out boys
she'll chew you up
「気をつけろ、坊や達。彼女はキミをクチャクチャと噛み砕くぞ」
watch out は「気をつけろ」
Watch your step [head].は「足下に(頭上に)気をつけろ」ですね。
chew は chewing
gum のchew。「噛む」ですね。bite
も「噛む」ですが、「一
口噛む」のがbite。chew
は「クチャクチャと何度も噛む。咀嚼する」というイ メージです。
■I wouldn't
if I were you
「もし俺がキミだったら、俺はしないね」
仮定法過去。何をしないのかって、彼女の生け贄になることですね。
■She's deadly
man, and she could really rip your world apart
「彼女はキケンな奴。キミの世界をバラバラに引き裂くことができる」
deadly は「破壊的な、致命的な、死に至る」など、とてもキケンな形容詞。
例えばdeadly wound は「致命傷」、deadly
bombing は「自爆テロ」。
なお、聖書にい う「七つの大罪」を deadly
sins と言います。
☆やっぱり女が強い?
確かに訴えられそうな歌詞ではあります。「男=オオカミ説」と「女=魔物説」どちらが正しいのでしょう。多分、どちらもありなんでしょうね。